AIと仕事の価値 ビジネスライクの終焉

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    私が社会に出始めた頃、某大手企業に勤めていたのですが会社で笑ったりすると先輩に怒られる時がありました。

    「仕事中に歯を見せるんじゃない!もっと真面目にやれ!」というわけです。

    もちろん上司、先輩が皆そういうわけではありませんでしたが、談笑などしているとどこからともなく冷たい目線を感じることはよくありました。

    当時は、まだパソコンも50人いるフロアに1,2台しかなく、なんでも人力でせっせっせとやらねばならない時代。

    上司は鬼となり人間味のない指示を出すことが求められ、それができる人間から出世していく時代だったのかもしれません。

    つまり当時は24時間戦えるビジネスライクで鬼のような(ブラック?)な仕事ぶりが評価される時代だったのです。

    (もちろん、みなさん「鬼」なのは仕事中だけで仕事を離れて酒席にでもなれば、含蓄深い人生論をお持ちの方、カラオケのうまい方、お酒と異性にだらしない方など、とても人間味のある方々ばかりでした。)

    さて、あれから30年、パソコンは一人1台どころか、IT全盛で携帯端末やスマホまで支給され、女性の社会進出もある程度進み、残業時間も制限され、パワハラ・セクハラも少しずつ影を潜めだし、割と古い体質の業界に属する私の会社でも働き方はずいぶんと変わったように思えます。

    しかし、仕事の価値感はこの30年間あまり変わっていないような気がしてなりません。

    未だビジネスライク優先、いかに効率よく受注し、納品し、代金を頂戴し、ビジネスプロセスを短縮するかが主眼。

    そこに感情の入る余地はあまりないどころか、感情を入れないで業務を行うことが良しとされているように思います。

    つまり我々は、「価格・納期・品質」の3要素でいかに競合に勝つか、というゲームをここ何十年も戦い続けているわけです。

    そして私自身もビジネスライクの権化として、社員の皆さんを叱咤しこのゲームを戦い続けています。 

    ITがビジネスに大きな影響力を持つようになった今、次の主役はAI(人工知能)であると言われています。

    今後AIがビジネスの世界で文字通り「ビジネスライク」に合理的な判断を促進させていくことはどうやら避けられそうもありません。

    我々は更に厳しいルールでこのゲームに立ち向かわなくてはならなくなるのでしょうか?

    超ビジネスライクな人間しかここでは勝ち残ることはできなくなるのでしょうか?

    この疑問に対する私の考えはこうです。

    おそらく現代ビジネスがあらゆる製品やサービスに対して要求する3要素「価格・納期・品質」はAIの発達により、世界中の同業他社間でほとんど差がなくなるでしょう。

    なぜなら、AIは深層学習により、条件の決まった環境においては人間とは比較にならないスピードで最適解を見いだせるからです。

    最終的にAIは3要素を条件とするあらゆるビジネスにおける最適解を見つけ出すことでしょう。 

    その時、「超ビジネスライク人間」は将棋や碁の棋士のようにAIにあっさり敗れ、その立場を失ってしまうのはないかと私は思います。

    3要素でAIに歯が立たなくなったとき、私達は何をもって人間同士で競い合うようになるのでしょうか?

    私はとても楽観的に人間同士はその時「愛嬌」とか「テイスト」、一言で言うと「人間味」と呼ばれる分野で競争するようになるのではないかと予測しています。

    テイストや愛嬌等は受け取る側の好みやタイミングによって正解が異なるため、最も最適化・プロセス化しにくい分野。

    勝ったつもりが負けていたり、負けたはずが勝っていたり、ルールもあやふやなところで競争しなくてはならなくなりますが、
    「人間性」こそがAIに対峙する人間の「ラストリゾート」なのではないでしょうか?

    「仕事ができれば人間性なんて」とがんばってきたそこのあなた。

    そろそろ私と一緒に戦術を練り直す時が来たようですね。

    これまで見てこなかった自分の人間性、見つめ直してみませんか?